ワイン 醸造

ロゼワインの造り方

今年もまた、収穫の季節が来ています。

ワイナリーのワインリストや植えているブドウの品種の構成にもよりますが、シーズンの最初に収穫されたブドウで造られることが多いのが、スパークリングワインとロゼワインです。スパークリングワインが多いのは、二次発酵を行うために果汁糖度よりも酸量が重視されるから。ロゼワインが造られやすいのはやはりブドウの熟度との関係や、スパークリングワイン造りとの関係があります。

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スパークリングワインとベースワイン

ロゼワインは軽い口当たりや主張しすぎないスタイルが人気で、夏場に良く冷やして楽しまれることも多く、バーベキューのお供としてもよく飲まれています。日本ではその色味から桜の季節に提供されることも多いワインです。

人気のあるロゼワインですが、その造り方は誤解されている場合も多くあります。色が濃くならないようにあらかじめブドウの皮を取り除いている、という完全な誤解から、赤ワインと白ワインを混ぜている、という間違いではないものの正解とは言い切れないものまでいろいろ言われています。

この記事ではロゼワインの造り方を解説していきます。

ロゼワインと赤ワインの違い

ロゼワイン、桜色くらいのものから軽くオレンジがかった濃いめのピンク色くらいまでのキレイな色をしたワインであることはよく知られています。では、ロゼワインとはなにか、と聞かれたら明確に答えられるでしょうか。

ロゼ (rosé) とはフランス語で「バラ色」を意味する言葉です。文字通り、バラ色に近い色をしたワインであることからこのように呼ばれます。英語のRosaですが、いわゆるロゼワインのような色合いのワインを英語ではblush wineといったり、品種に合わせてWhite MerlotやWhite Zinfandelのように呼んだりもします。

ここまで色の話ばかりをしているのには理由があります。ロゼワインの規定は基本的に「色」だけでなされているからです。

多くの場合、ロゼワインは赤ワインほど濃い色を持たないワイン全般を指しています。ロゼワインとして造っていても色が濃すぎると判断されると赤ワインの区分に変更されることもありますし、逆に赤ワインとして造っていても色が足りないと判断されるとロゼワインの区分にされたりもします。

つまり、ロゼワインと赤ワインの差は突き詰めてしまえば色の濃さだけなのです。ですので、多くの場合、ロゼワインとは色の薄い赤ワインともいうことができます。

ちなみに色の濃さがどの程度までであればロゼであり、どの程度からが赤ワインなのか、という基準は比較的あいまいです。公的な審査でもテイスターの感覚的な基準に任されている場合が多くあります。このため、ロゼワインを造る際には濃すぎる色は避けることが無難です。

ロゼワインとブドウ品種の関係

ロゼワインは多くの国や地域で赤ワイン用の黒ブドウ品種から造らなければならないとされています。このため、基本的にロゼワインは赤ワインの色を白ワインと混ぜることで薄くしたワイン、ではありません

1つの例外はスパークリングワインです。シャンパーニュをはじめ、スパークリングワインでは黒ブドウ品種と白ブドウ品種の果汁や発酵後の赤ワインと白ワインを混ぜて造ることが認められているケースが多々存在しています。

ドイツにおける赤ワインと白ワインの混合

またロゼワインは薄くても色がついていることを前提としています。このため、白ワイン用のブドウ品種からロゼワインを造ることはありません。仮に白ワインをベースにして最後に赤ワインでちょっとだけ「色付け」しているような場合は上記の白ワインと赤ワインの混合の例となります。

抽出を避けるロゼワイン造り

ロゼワインを造る際にもっとも重要なのは、「色を濃くしすぎない」ことです。すでに書いたとおり、仮に造り手はロゼワインのつもりで造っていたとしても色が濃すぎれば公的には赤ワインとして判定されてしまうこともあり得ます。このため、ロゼワインの造り方はどれも色味の原因であるフェノール類の抽出を避けることを中心に考えられた方法となっています。

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そういう意味では白ワインでありながら積極的に色味を強めていくオレンジワインとはちょうど対極にある造り方といえます。

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ロゼワインを造る場合にはいくつかのパターンがあります。その時に造るロゼワインがどのパターンによるものかによってもその造り方は違ってきたりもします。

ロゼワインを造る際のパターンには以下のようなものがあります。

  • ロゼワインを造る目的でロゼワインを造るパターン
  • スパークリングワインを造る際の副産物としてロゼワインを造るパターン
  • 赤ワインを造る場合の副産物としてロゼワインを造るパターン

また一般にロゼワインの造り方には次の3つの方法があるとされています。

  • セニエ法 (Saignée)
  • 直接圧搾法 (Pressurage direct)
  • 混醸法

この中で最後の混醸法はワイン法上で許可されていない場合が多いため、この記事では詳しくは扱いません。混醸法とは赤ワインと白ワインを混ぜる方法ではなく、発酵前の黒ブドウ果汁と白ブドウ果汁を混ぜて一緒に発酵させる方法のことです。

セニエ法も直接圧搾法も抽出を抑えることが目的の醸造手法

ロゼワインは赤ワインの色を薄くしたもの。大雑把ではありますが、これが前提です。ですので、ロゼワイン造りの基本は赤ワインの色の原因になっている成分の量を減らすことです。

では赤ワインが赤い理由は何かといえば、主にアントシアニン (Anthocyanin) と呼ばれるフェノールです。この成分は主に、ブドウの皮の部分に含まれています。赤ワインではアントシアニンを豊富に含む皮を長時間、果汁に漬け込むことで色味を皮から果汁に移します。

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カーボニックマセレーションという醸造手法

これに対してロゼワインの造り方としてしられるセニエ法も直接圧搾法も、この皮と果汁の接触時間を短くした醸造手法です。

この意味では冒頭に誤解の例として紹介した「ブドウの皮を除去してから果肉だけをプレスする」という考え方は決して間違いではありません。単にこれができないだけです。ブドウの粒から皮だけを剥こうとすると多くの場合は粒がつぶれて果汁が出てしまいますし、それを避けようとすると一粒ずつ丁寧に手作業で処理していく、なんてことになってしまいます。これはとても現実的とは言えません。そこで考え出されたのが、セニエ法であり、直接圧搾法なのです。

セニエ法はブドウを除梗破砕して容器に入れた後に容器の下部から果汁だけを抜く方法、直接圧搾法は収穫されたブドウをすぐにプレスして果汁だけを取り出してしまう方法です。どちらも果汁が果皮と接触する時間がほとんどないために取り出された果汁にはあまり色がついていません。

一方で直接圧搾法は果汁を取り出すためにプレスしてしまいますので、その後に改めて果皮との接触をさせるようなことはできません。つまり、もともと色味の薄いロゼワインを造る目的には適していますが、赤ワインを合わせて造りたい場合や色の濃いロゼワインを造りたい場合には向かない手法です。

これに対してセニエ法は赤ワインを造るのと並行してロゼワインを造ることができます。セニエ法を採用した場合には残された容器内では果皮からフェノール類が抽出される時の果汁の量が減るためにより色の濃い、抽出物量の多い赤ワインを造ることができます。つまりセニエ法はどちらかといえば赤ワインを造る際の副産物としてロゼワインを造る時に採用されやすい手法といえます。

スパークリングワインを造る際の副産物としてロゼワインが造られる場合にはスパークリングワイン側での要求から直接圧搾法が採用されることが多くなります。

ロゼワインを造る際のパターンとその時に採用されやすい醸造手法をまとめみると次のように概観することができます。

ロゼワインを造ろうとしてロゼワインを造るパターン

セニエ法でも直接圧搾法でも可能。色の濃いロゼワインや、抽出物量を増やして味のしっかりしたロゼワインを造りたい場合にはセニエ法を、色の薄い、軽めのスタイルのロゼワインを造りたい場合には直接圧搾法を採用することが多い。

 

赤ワイン醸造の副産物としてロゼワインが造られるパターン

赤ワイン側の抽出をしっかりとするためにセニエ法を採用。ロゼワインとしては比較的色の濃い、味のしっかりとしたワインとなる傾向が強い。


スパークリングワインを造る際の副産物としてロゼワインが造られるパターン

スパークリングワインとして強い抽出を避ける必要があることが多いために直接圧搾法が採用される傾向が強い。ロゼワインとしては色が薄く、軽めのワインとなりやすい。

今回のまとめ | 抽出物のコントロールは抽出時間だけに限らない

ロゼワインは白ワインや赤ワインと比較すると楽しまれ方に幅があります。

暑い日に軽く楽しみたい場合とロゼではあっても味のしっかりとした料理の味に負けないくらいの重さが欲しい場合とでは求められているものが全く違います。こうした違いに対応するためにはそもそもの造り方を変える必要があります。

そうした中でもう1つ、ロゼワインならではの要求があります。ブランドノワール (Blanc de Noir) の存在です。

ロゼ?ワインのいろいろ、知っていますか? 其の弐

ブランドノワールは黒ブドウから造られた白ワインといわれるように、見た目はロゼワインよりもさらに色が薄く、ほぼ白ワインと同じ見た目をしています。ブランドノワールを名乗るためには黒ブドウを原料にしながらもほぼ無色でなければなりません

一方で、セニエ法や直接圧搾法だけではこの要求にあった色味のワインを造ることはほとんどできません。どちらも多少なりとも色味が抽出されてしまい、ブランドノワールとして認められる範囲の色の濃さを超えてしまうためです。

このためブランドノワールを造るためにはさらに色を薄くするための方法を考える必要があります。

方法の1つはシンプルに抽出時間、つまりブドウの果皮と果汁が接触する時間をさらに短くする方法です。セニエ法では除梗破砕時に網などを設置してそもそも果汁と果皮が接触しないようにする、直接圧搾法ではプレス圧の低い時点での果汁のみを使う、といった方法が考えられます。

しかしこれでも不足な場合があります。

そうした際の対応方法がブドウの熟度を落として色がついていない状態のブドウを使用したり、一度は抽出された成分を再度果汁中から除去する方法です。前者はそもそも抽出されるアントシアニン量が極端に少ない状態ですし、後者は抽出されてしまったフェノールを濾過や吸着剤を使用して再分離させるために色味を薄くすることができます。

どちらも少なからず出来上がるワインの味や香りに影響がでる手法ではありますが、こうした複数の手法の組み合わせとそれぞれの程度の調整で最終的にワイン中に残る抽出物量がコントロールされています。

Nagiが実際にブランドノワールを造っている具体的な手法については後日、オンラインサークル「醸造家の視ている世界を覗く部」のメンバー限定記事として公開します。またサークル内で公開された限定記事は内容の一部を再編集したうえでnote上でも公開しています。ご興味をお持ちいただける方はこの機会にぜひサークルへの参加等をご検討ください。

 

 

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  • この記事を書いた人

Nagi

ドイツでブドウ栽培学と醸造学の学位を取得。本業はドイツ国内のワイナリーに所属する栽培家&醸造家(エノログ)。 フリーランスとしても活動中

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