すべての畑を歩きながらRAKのディスペンサーを吊るし終わると、今度は新芽の除去の作業がやってきます。
この作業は以前の記事で書いた、副梢の除去作業とは似て非なる作業です。副梢の除去は誘引した枝から出ている余計な芽や新梢を摘む作業でしたが、こちらはむしろ幹の到るところから顔を覗かせる新芽や、すでに伸び始めてしまっている新梢を摘む作業となります。
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幹から出る芽、とは
ぶどうの樹では芽は枝からしか出ないわけではなく、樹の幹の到るところから出てきます。
これは、もともとぶどうが蔓性の植物であり、枝と幹を分ける明確な概念を持たないことによっているものと思われます。話は少し逸れますが、枝を挿し木することで樹を増やすことが出来るという特性も、結局はこれと同じことに起因します。(関連記事: クローン、、、何かに似ていませんか?)
ただ、”新梢の除去とその意味”の記事でも書いたとおり、畑で栽培されているぶどうの樹についてはその芽の数、つまり、その年に伸ばす枝の数というものは基本的に管理されています。このため、幹から伸びてくる芽や枝というものは基本的には完全に予定外のものであり、除去の対象となります。特に根に近い位置にある幹からの芽や枝は、枝から伸びてくるそれらに対して成長が早い傾向がありますので、早めに除去することが重要となります。
これらの枝は本当に伸ばしたい枝の樹勢を削ぐ可能性があることに加え、樹形をいびつにし、作業の効率を悪くします。また、トラクターなどで走行する時に引っ掛けて樹にダメージを与えてしまう原因になってしまったり、空気の循環や日照の妨げになる場合もあります。そのような意味でも、幹から伸びる枝は不要なものなのです。
また、幹の下部、台木の部分から伸びてくる枝は基本的にVitis vinifera種のものではありませんので、ぶどう栽培者からしてみれば完全に余計な、使い途のない邪魔者です。これらは土に埋まった部分から伸びている場合もあるため、作業時は注意深く観察し、発見次第、切ってしまう必要があります。
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敢えて伸ばす芽もある
幹から出てくる芽や枝は邪魔者、といって来ましたが、実はこれらを意図的に残し、伸ばす可能性も存在します。
それは、次年度、もしくはさらにその先の年まで見越して誘引する枝を作る場合です。特に、幹の切り戻しを計画している場合などには、現在のヘッドよりも下に新しい枝を伸ばしておくことが必要になりますので、意図的に幹の適切な場所から枝を伸ばし、維持しておくことが必要なります。
またこういった場合以外にも、本来残すつもりで伸ばしていた枝が必ずしも無事に秋の収穫まで残っているわけではない、ということもあります。ぶどうの枝はワイヤーの上げ下げといった作業中やトラクターでの走行中、もしくは動物や風などによって栽培者の意図によらずに折れてしまうことがままあります。このような場合に、保険があるかないかは極めて大きなことです。
ですので、例え幹から伸びている枝であっても、伸ばす上で問題の無い場所にあるのであれば敢えて数を管理した上で伸ばす、という選択もまたあり得るのです。