今日は先日と同様、新梢の除去作業を行ってきました。
先日の支柱の固定と新梢の除去の記事でも書いたことですが、この作業は主に一つの場所から複数出てしまっている新梢(副梢)を除去するものです。普通は副梢の名の通り、メインの新梢は太く力強い一方で、除去すべき新梢(副梢)の方は細く、メインの新梢の横から生えているような場合がほとんどです。
このような場合には除去すべき新梢を迷うことはありません。このような状況下では、残されるべき新梢は自ずと残すと判断される諸条件を満たしています。
ところが、どちらの新梢も変わらず太く、力強く伸びてしまっているような場合があります。このような場合は、先日の記事のとおり、どちらを残すのかを改めて選別する必要が生じます。
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なぜ副梢は除去すべきなのか?
副梢を除去すべき一番の理由は、エネルギーの無駄使いを防止することにあります。
一般に一本のぶどうの樹から伸ばす枝の数は剪定の時に予め決められています。ところが、副梢をそのままにしてしまうと、この予定された数以上の枝が伸びることとなります。このような状況は様々な部分に影響を及ぼしますが、一番大きな影響は果実の熟度や凝縮度に現れます。
仮に副梢がそのまま伸びた場合、当然そこにもぶどうの実がなります。その一方で、ぶどうの樹が地面から吸い上げることの出来る水分や栄養分の量にはある一定の限度があります。このため、ぶどうの実の数が増えるということは、単純にこれらの母数を割る数が増えるということを意味しており、収穫時のぶどうの実への凝縮度が低下することになります。
また、ぶどうの実がなる前の、枝が伸びることに対しても水や栄養は必要とされます。そうして副梢が伸びた結果、全体のぶどうの品質を落とすことにつながるのですから、これはエネルギーの無駄遣い以外の何ものでもないのです。
副梢にも使い途がある
基本的には邪魔者扱いされる副梢ですが、ある一点においてその存在が認められる場合があります。これは厳密に言えば芽吹いて副梢として伸びる前のことなのですが、副梢の芽が新梢の芽のスペアとして使われる場合がそれに当たります。
副梢の芽が新梢の芽のスペアとして使われ得るケース、それは冷害などによって新梢の芽がダメージを受けてしまった場合です。
春先、芽が柔らかくなってきている一方でまだ芽吹いていないというタイミングで気温が氷点下まで下がるようなことがあると、芽がダメージを受けてしまい、発芽せずに枯れてしまうことがあります。雹などによって直接の被害を受けた場合も同様です。
このような場合、予定していた新梢を得ることが出来なくなってしまうため、その芽の代替として副梢の芽を伸ばすことで収穫の減少を避けるようにするのです。
ただ、もともと副梢だった芽から育った枝は成長が悪い場合もあり、完全な代替としては使えないこともままあります。最近は冬から春先にかけての気温が高くなっており、ぶどうの芽吹きが早くなっているため、相対的に冷害のリスクが高まる傾向にあります(関連記事参照)。当然、副梢の成長が多少悪いとはいっても、無いよりはあった方がいいのは事実なので、栽培家はまだ芽吹く前に副梢の芽を見つけても、万が一の時のための保険としてその時には手を出さず、実際に芽吹いてから除去して回るのです。
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